一般的に日本企業では60歳で定年退職になります。その後は会社によって色々な形で再雇用という働き方を設けていることもありますね。
さて、私の職場で課題になりつつあるのがこの再雇用者の活かし方と処遇です。
数年前まで、再雇用者は一律に1年ごとの契約社員となり、定年前とは異なる仕事に代わり、責任も伴わない立場になるのが常でした。
ところが社員の高齢化に加え人件費削減政策で新規採用を行わずにきたことで、再雇用者とその予備軍が大量にたまってきている状態に。
そこで、能力のある人には定年後も同じ仕事で、役職者としての立場も継続してもらい、処遇も従来より高水準にする制度を作りました。
ポイントは、全ての再雇用者の処遇を高水準にするのではなく、あくまでも能力があり、定年後も活躍してほしいと思える人で、双方の合意があった場合のみそのような処遇にしたことです。
同じ会社、同じ仕事なのに…
わが家にも昨年定年になり再雇用になった人がいます(夫)。
定年後も定年前と同じ会社、同じ職場で、仕事も同じ。役職ではなくなったので、若干責任は軽くなったものの給与は激減。仕事の実態からすると、処遇が妥当なものかどうかやや疑問に感じます。
会社のほうも人手不足で適切な人事ローテーションができず、結局再雇用者が同じ仕事を続けていて、処遇だけ昔の制度が残っているように思います。
ちなみに夫の会社には私の会社のような再雇用者の処遇の改善制度はありません。
再雇用者の約半数は快適に働けていない
2021年1月、日経BPコンサルティングが「定年後の就労に関する調査」を行いました。
それによると、再雇用後も同じ会社にいる人が65.3%で最も多い結果。
次に、勤務体系についてですが、勤務時間や日数については63.5%が、業務量については47.9%が「定年前と同水準」。一方で、年収については「定年前の6割程度」が20.2%と最多で、「5割程度」が19.6%、「4割程度」が13.6%となっています。
仕事の責任については、「定年前とほぼ変わらない」が41.9%だった一方、「定年前より軽くなった」は53.7%。
これらの結果を見ると、定年後も同じ会社、同じ働き方、同じ責任、でも給与は激減という人が半数前後いることが伺えます。
また、同じこの調査で定年後に働く上での不安を聞いたところ、最も多かったのが、「給料や待遇が下がること」で半数近い46.7%だったそうで、再雇用者が快適に働き続けているとは言えない様子が見えてきています。
再雇用者も能力主義に
再雇用者が快適に働けるようにするには、やはり能力、働き方に見合った処遇にしていくことが必要だと思います。
さて、皆さんの会社の50代のおじさん達はどんな様子でしょうか。
私の会社ではこんな印象。
・こなせる業務の守備範囲は決まっている。
・マネジメントができる人とできない人に分かれている。
こんな感じですね。
はっきり言えることは、今時点から能力が急に伸びたり、業務の守備範囲が急に広がったりすることはないということ。若手と違って、年齢が高くなればどうしても伸びしろはなくなってきます。
能力によって処遇や働き方が変わる制度が再雇用に広がっていくと、定年後に必要な人材かどうかは、50代の働きぶりで概ね会社側に選別され始めることになります。
これは能力のある人にとっては大いに歓迎だと思いますが、定年後も生活のためにそれなりの処遇が必要、という切迫性のある人は、定年前からスキルを磨く努力、業務の守備範囲を広げる努力をしておかなければならないと言えます。
また、定年間近になって、定年後は不要な人材と会社から言い渡される人もいるかもしれません。
これもスキルを付けておけば、定年後は別の環境で再就職したり独立することもできるので、何にしてもスキルアップは必要ですね。
現役だけでなく定年後も能力主義、というと厳しく聞こえますが、働き方の選択肢が広がっていくというプラスの効果のほうがあると私は思います。
定年前の会社にしばられることなく、やってみたかった仕事にチャレンジしてみる、そんなチャンスにもなります。
再雇用者の働き方の多様性を早急に進め、シニア人材が不安なく働ける環境が整備されていってほしいものです。