表面的な形を作ることからの卒業!骨レベルで考える

レッスン

バレエのレッスンで、先生から個人的にお直しをされることがありますね。

「○○さん、もう一度アラベスクしてみて」とか。

腕の位置と脚の角度を直されて、「次回から気をつけてこの形にできるようにしよう」とその時は思っても、そのうち忘れてしまって、結局はいつもの自分のクセに戻ってしまうということ、ありませんか(だから万年同じことを注意され続ける)。

だって、それ以外にもバレエは気をつけなければならない決まりごとがたくさんあるから、全部完璧に覚えてなんていられないから…。

ところで、そもそもバレエは一つ一つの形(型)を完璧に記憶して踊るものなのでしょうか。もしそうだとしたら、作品を踊る時に形を繋げただけの固い動きしかできないダンサーになってしまうように思いませんか。

実は「バレエの表面的な形」を身に付けることを目標にしていると、バレエの本質には近づけない、ということに私はある日気が付きました。

表面的な形を作ることからの卒業

例えばパッセバランス(ルルベ)の時、どんなことを考えてやるでしょうか。

初級者の頃の私は、

・軸足はまっすぐに

・骨盤は傾けずに水平に

・パッセの脚はできるだけアンデオール

・上体は引き上げる

ぐらいだったと思います。

これらを確認したら、バーを握っている手を「えいっ!」と離して、バランスがキープできたら「今日はうまくいった!」と思い、バランスが取れなかったら「今日は調子悪かったな」で、おしまい。

でも、これは単にイチかバチかで手を離しているだけなんですよね。運任せ。これじゃいつまで経っても、毎回バランスがきちんと取れる体にはならないんです。

この時の私は、まだパッセバランスを表面的な形で考えていました。

ある日、先生にパッセの形を直されたことがありました。主に骨盤の傾きと、パッセの脚のアンデオールをもっと狭めて(もっと膝を前に)でした。「そう、その位置」と先生はおっしゃいましたが、私の中ではしっくり来なかったんです。こんなんじゃ軸足が立っていられないし、パッセの膝がいつもより前にあって、バランスが取れない。「絶対これじゃない」と私は思い続け、思いきって先生に抵抗することにしました。つまり、先生のお直しを無視して自分のパッセを探し始めたんです。

そんなことがあってから1カ月ほど。気が付いたらパッセバランスが毎回確実に取れるようになっていました。しかも先生が直した形とは違い、「自分のパッセの形」で立つようになっていました。驚いたのは、先生が「パッセ、その形でいいからもう少し腹筋が強くなるといいわね」とおっしゃったんですね。あれ?先生の直した形と全然違うことやってるんですけど…。

骨レベルで考える

先生にお直しされてからの1カ月、何をしていたかというと、一つは主に毎日の腹筋トレーニングでした。特にパッセのためにしていたわけではなく、腹筋割ってみたいなぁという興味で始めただけです。複数の腹筋トレーニング種目をひたすら毎日続けていたら、お腹が締まっただけでなく、1カ月で様々な変化が出てきました。

特に腹斜筋が強くなったことで、バランス系(パッセ、アラベスクなど)とピルエットが安定するようになったことと、二の腕から腹斜筋が繋がるようになったことで脇下がしっかり安定する(腕とボディを繋げて使える)ようになったのが実感できました。

もう一つが、解剖学的知識の習得。バレエの動きを骨レベルで考える習慣です。

パッセの軸足は、MP関節でしっかり床を押し、その上に足首、その上に脚の付け根、その上に骨盤、その上に上体、その上に頭と、一つずつ積み木を積み上げるようにしてバランスを取る、とイメージするようになりました。骨を組み立てていく感じです。

そして骨を理想の位置に持っていくために必要なのが、筋力です。自分の筋肉をコントロールして骨レベルでバレエの形に持っていく。パッセバランスだけに限らず、骨でバレエの動きをする考え方になってから、いろいろな動きが安定し、バレエが前より簡単に思えるようになりました。もしかしたら、先生にパッセを直していただいた時の形と今のパッセの形が、結果的に見た目は同じになっているのかもしれません。でも、そこに至るまでの体の中の感覚は全然違います。

体の中がどうなればよいのかを考える

バレエを表面的な形で習得しようとすると、実はものすごく大変なんじゃないか、と思います。もっとシンプルに、自分の体の中がどうなればよいのか、を考えたほうが簡単な気がしています。表面的な形がバレエだと思っていると、作品を踊る時に自由に上体を使ったり、大きく動けないと思うんですよね。バレエはダンスなのだから、堅苦しい、不自由な動きをすることがバレエではないはず。

骨レベルでバレエの動きをしたいと思った時に、どうしても必要なのが筋力。これはレッスンの時間だけでは身に付かないので、主にインナーマッスルの筋トレはやはり必須。必要な筋力が無いのにバレエの形をやろうとすると、必死になって体の外側を力で固めるしかなくなってしまうんです。でも、それはバレエの形を真似ているだけ。

私の感覚としては、筋力が付くと、バレエをする時にだんだん力を抜くことができるようになるんです。体に力を入れてぎゅっと固めてバランスをキープしたり、ポーズしたりする必要がなくなります。でも、あくまでも骨が優先で筋肉はその次。筋肉でバレエをやると、「運動」になってしまいます。

結果的に同じことをやっているように見えても、バレエは見た目と体の中で実際にやっていることは違うんです。それを見た目だけで追求していては、いつまでもできないことはできないまま。

なかなかその「体の中で実際にやっていること」までをレッスンの中で教えてくれる先生も少ないです。大抵の先生は子供の頃から当たり前に体の中から使えてるので、大人にあらためてそれを説明するのは難しいでしょう。また、一人一人違う体を、レッスンの中だけで個別に指導はできません。だからレッスンでは最終的な見た目の形を指導するだけになりがちです。

体の中でやっていることが本当のバレエである、ということに気付いて、それを研究し始めると、自分のバレエが変わってくると思います。

 

ただし、バレエにはいろいろな手法があるので、必ずしも私のようなアプローチだけが正解ではないことを念のため申し添えておきます。

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