「何となくバレエみたいな動きばかりが上手くなってしまう」大人バレエの環境

レッスン

大人がバレエを学ぶ、バレエに親しむ場は、年々広がっているように思います。最近では、大人から習い始めた人でも、その学びを評価してもらえるコンクールや、大人だけの全幕バレエ公演に参加できるシステムもあるようですね。

私が19歳でバレエを再開した時に入った町の小さな教室では、大人は5人くらいだったと思います。発表会は子供がメインで、大人は小品集でちょっと出るくらい。大人で動ける人は、子供に混ざって、くるみや眠りのワルツにコールドで出たりしていました。

大人のバレエ環境は、子供がメインのバレエ教室で、遠慮がちにレッスンや発表会にちょろっと出るような感じでしたね。

現在はその頃より大人バレエの活動範囲が広がったのは確か。

それなのに大人バレエが上手になれる環境は、あまり進んでいないような気がします。

大人がバレエを学ぶ環境の課題

大人対象のバレエスタジオが、首都圏を見るかぎりは増えているように見えますが、先生の教え方やスタジオの方針はますます玉石混淆の状態。そんな様子を眺めている中で、私が感じる大人バレエの課題を挙げてみます。

集団レッスンのデメリット

バレエを初めて始めた時、経験者と同じクラスに入って「とりあえずみんなと同じようにやってみて」と言われて、何となく見よう見まねでバレエをやってきたというケース、ないでしょうか?

集団レッスンでは、その生徒の習得度合いにあわせて段階を踏んだ適切な指導ができません。少人数のクラスならまだしも、10人を超えると分からないことを先生に質問しにくいし、先生は生徒全体に対しての注意しかできないので個人的な注意をもらえず、間違ったやり方のまま何年もやり続けていた、ということがよくあります。バレエは同じ動きに見えても、実は使っている筋肉は全然違っていることがあるんですね。

何年もバレエをやってきて、ある日「正しいプリエって何だろう?」と思ったりして、自分が正しいバレエをちゃんと習ってこなかったことに気が付くんです。

集団レッスンでは基本をちゃんと学ぶ機会がないまま、とりあえず周りと同じ動きをなぞるだけでレッスンが終わりになりがちです。

大人の生徒の扱い方の問題

大人からバレエを習い始めて数年で、バリエーションを発表会で踊るようなことを最近よく見掛けます。

「先生、○○のバリエーションを踊りたいです」「では一緒に頑張りましょう」と許可してくれる先生が多いようですね。

ちなみに大人からピアノを習い始めて数年で、「先生、発表会でショパンのエチュードを弾きたいです」と言ったら、先生は許可しないでしょう。例え楽譜通りに鍵盤を押すことができたとしても…。

バレエのバリエーションはプロのしかもプリンシパルが踊る演目ですね。結構ハイレベルなことを、基礎がまだできていない人にやらせてしまう風潮がバレエにはあるように思います。

基礎ばかりやらせていたら大人はつまらなくなってレッスンを受ける人がいなくなってしまうから、先生もそれを承知で能力以上のことでも要望に応えてしまうのだと思います。

そもそも大人はバレエに親しめればよく、本気で上達を目指すことより、楽しく長く続けてもらったほうがスタジオの運営上もよいのだと想像できます。

 

その風潮は大手が運営するようなオープンクラスでもあります。

入門クラスと謳いつつやっていることは90分のフルクラスで、プロが毎日やっている内容とほぼ変わりません。それでも動く順番だけは皆ついてきているのが、見ていて不思議な感じがします。基礎を飛ばして、何となくバレエみたいな動きや形がとりあえずできるようになっているような…。

 

いずれにしても、習得段階を踏まないような学び方(教え方)がわりと行われているのが大人バレエで、そんな結果、大人へは「何となくバレエみたいな動き」を教えるだけのレッスンになる傾向があります。

大人を教えられる教師の不足

わが国にはバレエを体系的に学んだり、指導者を育成する機関は、ほぼないのが実際のところ。つまり、バレエの先生というのはほぼ「現役か元バレエダンサーだった人(バレエ団に所属していた人)」がやっていて、解剖学や指導法を勉強した上で教えるということではなく自分の経験や勘で教えています。海外での指導法(ワガノワ、RAD等)を勉強して教えている先生もいるにはいますが、まだまだ少ないほうだと思います。

しかもバレエの先生は大抵子供の頃からバレエをやっていて、コンクールに入賞したり、バレエ団でダンサーとして踊ってきた、いわばバレエに選ばれた人です。身体条件だってバレエに向いていたからこうしてやってこれたわけです。

では、こういった先生から、特に身体条件がいいわけでもない一般の大人が習うとなるとどうでしょうか。

先生は一般の大人を初心者から上達させるための指導法を知らなくて当然です。ワガノワであっても子供に教える方法です。大人は子供と違って体も硬いし筋力も弱い、いろんな癖がついているのでバレエを基礎から身に付けさせるのは相当大変なこと。例えば「脚を高くキープできない」という大人に、「子供の頃から気が付いたら脚が高く上げられていて、特にそのことについて考えたこともない人」が脚の上げ方を教えられるでしょうか。

実際、先日受けたレッスンの先生は、この質問をした大人の生徒に「もっと内側を使うのよ」の一言で終わらせていました。いや、それは分かってるんだけどできないから聞いてるんですよね。

ダンサーであることと教師であることは別の能力です。それに加え、大人を教えることのできる教師は本当に少ない、といえます。

 

さて、ここまできて何だかバレエの先生を批判しているように見えますがそうではなく、日本のバレエ界を取り巻く様々な事情から、大人バレエの環境の現実をまずは受け止めておくべきだと思うのです。

「何となくバレエみたいな動きばかりが上手くなっている」と気付いたら

バレエへの関わり方や目的は自由で、楽しくレッスンできればよいとか、ちょっと無理してでもバリエーションを踊るのが夢、という人もいるでしょう。オープンクラスで気軽に体を動かしたいという人もいてよいと思います。

でもいつか上達に限界を感じる時が来ます。

もし、「私、何となくバレエみたいな動きばかりが上手くなっている気がする」と気が付いたら、そして大人でも本当に上達したい、ちゃんとバレエを学びたい、と思ったらどうすればよいでしょうか?

まずは

「大人を上達させることについて勉強していて、指導ができる先生に習うこと」です。

残念ながら良いダンサーが良い教師とは限りません。

「もっとアンデオールして~」「もっと内腿使って~」「もっと軸足強く~」というけれど、もっとアンデオールできるための、もっと内腿を使うための、もっと軸足を強くするための体の使い方をその先生は具体的に教えてくれているでしょうか? もっと言えばレッスン以外でのトレーニング方法まで教えてくれているでしょうか?

大人はそれぐらいやらないと、レッスンに参加しているだけでは上達できないのが現実です。

そんな先生を見付けるのはなかなか難しいけれど、私の場合は20代の頃にお世話になったA先生が唯一そういう先生で、バレエ団に所属しながらRADの勉強をされていました。

アンデオールの立ち方の説明だけでその日のレッスンが終わることもありました。「バリエーションなんて100年早いわよ」と大人クラス全員に向けて言われたのを今でも覚えています。

A先生までいかなくとも、大人を教えることができる先生、大人を上達させることに関して研究し妥協しない先生に習うことが必要だと思います。そういう先生は、バレエの本質である基礎を身に付けることをとても大事にしていてハイレベルなことはさせません。

もし、そんな先生が見つからないなら「ハイレベルなことをしない、今の自分のレベルにあったレッスンを受けること」が第一歩です。

現在の日本における大人がバレエを学ぶ環境を理解した上で、自分のバレエの学び方を選択することが大事な気がしています。

「長年バレエを続けているのに、なぜ上達しないんだろう?」「いつまで経っても初級者から抜け出せない」と悩んでいる人は、一度自分の学び方を見直してみたほうがいいかもしれません。

 

実際、大人を指導できる先生を見つけるのは結構難しいですね。先生だけに頼るのではなく、自分で学ぶことも必要です。

 

ピラティスやバレエ整体、フロアバーといったアプローチで体の使い方を見直すことから上達に繋がることもありますね。

実はバレエは結構頭を使うんです。

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最近はYouTubeからも学べることがたくさんあります。

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